こんにちは、渕野です。
前回の記事「あなたはどんな釉薬を使っていますか?」で焼成後の割れの原因は、
磁器土と釉薬の相性だというお話をしました。
今回は、その際に出てきた
“熱膨張係数“について説明したいと思います。
われわれが普段扱う熱膨張係数は、加熱する際にそのものの長さが
どのくらい変化するかを表す線膨張係数と呼ばれるものです。
熱膨張係数は常に一定の数値ではないため、ある温度範囲での平均値で表しています。
単位は毎ケルビン(/K)で、長さが膨張する割合を温度あたりで示したものになります。
ケルビンは絶対温度の単位です。
(これとは別に、体積の変化を表す体膨張係数・体積膨張係数があります)
熱膨張係数の測定は、磁器土ごと釉薬ごとに試験体を作製し専用の装置で行います。
測定したい磁器土や釉薬を焼いて試験体を作製し、
焼成後に切断などの加工をしてから、加熱しながら試験体の膨張率を測定します。
測定結果に基づき算出される熱膨張係数の例を挙げると、
0.000006/Kというような数値で、
6.0×10-6/K(ロクテンゼロカケルジュウノマイナスロクジョウパーケルビン)
と表記します。
ほとんどの場合で、at700℃というような表記が加えてあります。
これは基準温度から700℃までの平均値であることを意味しています。
600℃までの平均値だと、at600℃という表記になります。
このように膨張率とそこから算出する熱膨張係数は、
焼成した試験体を再度加熱しながら測定して得られる数値ですので、
成形してから焼成後に縮む収縮率とは異なるという点には注意が必要です。
こうやって得られた熱膨張係数が、磁器土と釉薬でそれぞれどのような値になっているのか、
その組み合わせはどのような関係になっているのか、という点に着目し、
不適切な組み合わせの場合はその改善策を検討していくことになります。